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2008年10月 9日 (木)

「ソルヴェイグの歌」― 5

カルロスが竹の串をナイフで削り、山本の持ってきた蛙をさばき始めた頃、数人の男女がギターやら小さな太鼓やらを担いでやってきた。 カルロスよりもひと回りは年かさと見えるエドウィンは地元のジンのでかいビンを早速開けると、手際よく小さなグラスに分け、みんなに手渡し、黙ってカルロスの手伝いを始めた。

山本は、小さなグラスにはいった強いジンをカッと空けると、それをカルロスに差し出した。 なんのことだか分からぬカルロスが言われるままにグラスを持つと、山本はジンのビンを持ち上げ、酌をした。 

「日本流だ。 飲め。」

山本はカルロスの飲みっぷりを眺めていたが、カルロスがにやりと笑ったのを見逃さなかった。 マリアと若い女達が豆を煮る匂いが漂って来る。 

まだ高校生くらいだろうか、ボビットはギターを弾き始める。 スペイン風のフォーク・ソングであった。 ちょっと甲高い声で歌い出すと、女達も男達もはやし立てた。

山本はマリアの甥っ子が戻ってきていないのに気が付いていた。

焼きあがった蛙を皆がほおばり、鍋の豆も皿に盛られ、ギターも二人になり、太鼓の音も入って来たころにはジンも半分ほどになっていた。 

その時である。 遠くでパン、パン、パンと銃声が響いた。 そして、それに応ずるような機関銃の音。  若い連中はいっせいにその方角をみた、音楽もやんだ。

「吉田、ちょっと見て来い。」

山本は部下に命じた。 門の外にいた部下は、音とは反対の方角へ走り出した。 本部のある小学校の方角だった。

「カルロス。 続けよう。 あれは、定期便だ。」

「・・・・・。 いいだろう。 ボビット、続けよう。」

ボビットは、遠くの銃声を気にしながらも、甲高い声を張り上げた。

銃声はまもなく終わり、風のそよぎが戻った。

   

「カルロス。 馬鹿な話だと思わないか。」

山本はつぶやくように言った。

「なんのことだ。」

ジンをグラスに注ぎながらカルロスが山本を見た。

「俺はフィリピン人と撃ち合う為にここに来たわけじゃない。」

「どういう意味だ。」

「俺の相手はアメリカだ。」

ボビットは、声をひそめ、女達はマリアに従うように家に入っていった。 夕暮れが近づいていた。

(続く)

注: この話はフィリピン人の体験者から直接聞いた話を元に創作しております。

   尚、著作権は放棄してはおりませんので、ご留意下さい。

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