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2012年11月13日 (火)

井上靖「天平の甍」を読む。-4 もらえるだけ もらってしまえ!

旺文社文庫 井上靖著「天平の甍」を読んでいます。

中国の土地を踏んだ4人の留学僧は その後どうなっていくのか。

p28
「洛陽にあって唐政府に委託された留学生や留学僧たちは、その
勉学の目的と希望とを斟酌されて、それぞれ適当なところへ
配されていた。 普照、栄叡、戒融、玄朗の四人は大福先寺
入れられた。・・・普照はここに・・・高僧定賓がいることを
知っていて、定賓について法を受けようと思っていた。」

p29
「日本の若い僧侶たちはこの寺にはいって間もなく、この寺が
訳場としては大きい歴史を持っていることを知った。
・・・義浄は・・・の翻経をここで行っていたし、・・・
善無畏が、ここに住して「大日経」を訳したのもほんの
十年ほど前のことであった。」

p30
「留学僧の生活は比較的自由であった。 普照らはまず
当分会話を覚えることに専心した。 戒融だけは、どこで
覚えたのか、唐語をしゃべることができた。」

やはり、留学の基礎は外国語なんですねえ。
当たり前じゃあるんですけど、経典を写したり、翻訳したり
することを期待される訳ですもんね。
日本にはない最先端の宗教、文化を日本に持って帰る任務ですから。
余程の秀才でなくちゃ出来るこっちゃないですね。

そして、この4人が見た中国は、

「普照と栄叡と玄朗の三人は、・・・眼に触れるすべての物が
驚愕と讃嘆の材料であった。三人の若い僧には日本という国も、
奈良の都もひどく小さく貧しく思われた。

p31
「(戒融は)おれは唐へ来て初めてみたのは餓えている人間だ。
おまえも見たろう。蘇州へ上がってから、毎日のように餓えた
難民ばかり見た。
いやというほど見せつけられた。」

「あれだけの難民がいたら、日本ならたいへんなことになる。
この国では雲が流れるように、黄河の水が流れるように、
難民が流れている。 まるで自然現象の一つのようじゃないか。
経典の語義の一つ一つに引っかかっている日本の坊主たちが、
おれにはばかに見えてきた。
きっと仏陀の教えというものは、もっと悠々とした大きいものだ
と思うな。・・・」

まるで対照的な見方なんですね。
何故難民がいたかというと、
「前年は、夏前の旱魃と秋の霖雨のために、作物は実らず、
・・・・何十年にもない飢饉だということだった。」

栄叡は・・
p34
「おれはこの国は いまがいちばん絶頂だなと思った。
これがいちばん強いこの国の印象だ。 ・・・学問も、
政治も、文化も、何もかもこれから下り坂になっていくのではないか。
いまのうちに、おれたちはもらえるだけのものをもらって
しまうんだな。・・・恐ろしく多勢の人間が生きているな。
・・・生きものの意志で、食って、寝て、生きているな。」

もう随分前の話なんですが、私が初めて中国にパックツアーで
行った時の印象。
その時は、西安やら敦煌あたりに行ったんです。
古いお寺や石窟などを見て、いわゆる西域と呼ばれる広大な
ユーラシア大陸の入口みたいな場所に立ったんです。

その時思いました。
そうか、シルクロードから、このずっと西から、そしてそのまた
ずっと南のインドから、仏教が何世紀もかけて中国にやってきて、
ここからず~~っと東の端っこの日本にまで伝わっていったのか。
日本って本当に野蛮人の住む、東の端、極東だったんだなあ
中華思想なんていいますよね。
中国が世界の中心だ・・・なんてことが外国人の私にでも
実感できるような場所でした。

さて、今の中国と今の日本はどうなんでしょう
「今のうちにもらえるだけのものをもらってしまおう」なのか、
「ひとつひとつにひっかかっている」のか、
「悠々としている」のか、
「生きものの意志で 生きている」のか。

私は出来ることなら泰然自若で、高い文化の、悠々とした日本
あって欲しいと思っているんです。

ところで、この小説、映画にもなったんですねえ。
http://movie.goo.ne.jp/movies/p19057/story.html

小説のストーリーと映画ではちょっと違うところもあるんでしょうが、
楽しみましょう。

==その5へ続く==

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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