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2012年11月22日 (木)

井上靖「天平の甍」を読む。- 13  鑑真の失明 そして 南無阿弥陀仏

旺文社文庫 井上靖著「天平の甍」を読んでいます。

p125
普照は戒融に案内されて、異国の食物を食べるために異国の船が
群がっている港へ出た。 ・・婆羅門の船もいれば、崑崙(マレー)の
船も、ペルシャの船もいた。
・・・港には獅子国、大石国、骨唐国、白蛮、赤蛮など、今までに
その名を聞いただけで一度も眼にしたことのない、皮膚の色も眼の色も
まったく違った異国人たちの姿が見受けられた。

戒融が海路天竺へ渡ろうとしていることを知った。
行きは海路を取り、帰途は玄奘三蔵の「大唐西域記」の道を取って
唐土へ帰るつもりだと戒融は語った。

ふ~~ん、戒融って坊さんは、今ならさしずめバックパッカーでしょうかねえ。
インターネットで検索しても歴史的資料としては出て来ませんけど、
この戒融が紀行文みたいなものを残していたら面白かったでしょうね。
残念だなあ。 もったいない。

p129
普照は自分だけこの(鑑真の)一行から脱しようと思った。
そうすることによって、栄叡の死は意味を失い、自分のここ八年間の放浪生活
の労苦もまったく徒労に帰するわけであったが、この際自分の信ずる道を
取る以外しかたがなかった。 普照の瞼には鑑真にかわって、新しく業行が
浮かんできていた。 業行の持っているあの膨大な経典類の束は、これこそ
なんの躊躇も疑いもなく日本へ持ち運ばなければならぬものであった。

ここに到って、一人残された普照さんは、鑑真や他の唐の僧たちに
迷惑をかけてはいけないとおもっちゃったわけです。
それなら、あの経典だけでも日本に持ち帰ろうと・・・・

p129
これを決定的なものとしたのは、・・・鑑真の視力が急速に衰えて来た
ことであった。 鑑真は六十三歳になっていた。 
ほとんど別人のような風貌になっていた。 体力も衰え、・・・ことに老齢の
鑑真は甚だしかった。 

p130
普照は永年かん苦をともにした一行と袂を別って一人陸路ぼう山を目指した。
・・・このとき天宝九年の夏六月、普照は四十のなかばを過ぎ、・・・・

そして、その後鑑真になにが起こったかといいますと。

p132
鑑真は日一日眼光が薄れ、物象がしだいにぼんやりしてくる一方だったので、
・・・胡人の療治を受けた。 が、その効験もなくついに明を失するに
至ったのである。

p134
(鑑真の弟子)祥彦をもたれさせ、西方に向かって阿弥陀仏を念ぜしめた。 
言われたように、祥彦は素直に、「南無阿弥陀仏」 と一声唱えた。
「彦、彦」
と、鑑真は呼んだ。
そのときはもう端坐したまま祥彦は息絶えていた。

このように次から次に鑑真一行を不幸が襲ったわけですが、
この時代に 浄土教の「南無阿弥陀仏」が既にあったんですね。

そして、普照は十四年ぶりに洛陽に戻り、業行が宿としていた大福先寺に
やってきます。
業行は、経典が南海島の寺に置き去りにされたという普照の話を聞いて、
憤慨するんです。

p135
「あれは日本へ持っていくための経巻です。 なるほど仏像以外一物も
ない辺土の寺へ収めたとすれば意味はあるでしょうが、しかし、
あれは日本へ持って行くために、私が生涯をかけた仕事の何分の一かです」

こう言われた普照は、もっともだと納得して、
失われた経典を普照自身が写経して穴を埋めると約束するんです。
業行の生涯の仕事を無にしてはならないという普照の決意も素晴らしい。

p142
普照は阿倍仲麻呂をわずらわして、経典の借用方の便宜をとりはかって
もらおうと思った。 当時、仲麻呂は衛尉卿の官名を帯びていて、・・・
を掌握している高官であった。

業行に対する罪滅ぼしをするように、普照はいろいろな経典を借りて
写経に専念したんです。
そして、そうしている頃に、第十次の遣唐使派遣の船がやって来ます。

その大使は藤原清河で、副使が大友古麿。 それに前の遣唐使船で
日本に帰っていた吉備真備も乗っていたんです。

p145
春の終わりに難波津を発した四船五百余人が無事に寧波付近に上陸
したのは七月であった。 そして一行は秋の終わりに都長安にはいった。

p146
大友古麿だけは黙って普照の言うことに耳を傾けていたが、
たれへともなく、「それほどまでに日本へ渡りたいのなら、
その鑑真とやらをいっしょに連れて帰ってはいかがであろうか
と言った。

p148
普照は鑑真以外に五人の唐僧の名を挙げた。
・・・古麿は玄宗に奏上して堂々と正面から鑑真らを招ずる手段を
講ずるつもりらしかった。

今度は遣唐使船をつかって日本に渡るという話なので、
非合法な手段は取れないってことのようです。

普照は業行の経典を日本へ持って行く話を業行に伝えるんです。
そして、そんなある日、あの玄朗が現れます。

==その14へ続く==

 

 

 

 

 

 

 

 

       

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