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2016年11月16日 (水)

タミル語起源説 「空気の研究」と「国語学者・大野晋の生涯ー孤高」川村二郎著 を読む - その5

「空気の研究」と「国語学者・大野晋の生涯ー孤高」川村二郎著 を読む - その5

ふたつの書籍を読み比べながら、日本語と「空気」の
関係のヒントを得たいと思っています。

Img_3361

「空気」と関係づけるのは、ちょっと無理やり感があるん
ですが、その無理やりをやっちゃいましょう。

p315

ゆきつけの大きな書店をのぞくと、大野の著作を集めた
コーナーがなくなっていた

小学生のための書きとり練習の大規模な組織を大野中心に
つくることになっていた出版社は、その計画から撤退して
いた。

講演の依頼がこなくなった。

=== まあ、酷いもんですね。
    本人が留学中の留守を狙って、「空気」を形成
    した輩がいたわけだ・・・
    こういうのを陰湿ないじめって言うんでしょうね。

大野が「毎月、タミル語について書かせる気はないかね」と
聞くと、社長は「先生、あの研究は大丈夫なんですか」という。

「ああ、あれは大丈夫だよ」というと、「そうですか、それじゃあ、
よござんす。 連載を始めましょう」といってくれた。

十七年後に刊行する「日本語の形成」の母体になった。

学問のことは、学問で決着をつけるべきだと考えることにした。

p316

スリランカ・ジャフナ大学のサンムガダス教授夫妻の身に、
危険がおよびそうになった・・・

スリランカでは・・・シンハリ人と、・・・タミル人の間で、
深刻な対立が続いていた・・・

大野は夫妻を東京に呼ぶことにし・・・

夫妻にとって日本語は発音が簡単なうえ、文章の語順が
同じなので、覚えやすいらしい。

国際交流基金の助成金も受け、大野と共同研究することに
なった。 ・・・大野の研究は、一気に加速することになる。

=== やっぱり、出版社の社長といい、タミル人教授夫妻
    といい、最後は信頼できる人ですね。
    国際交流基金も偉い! (ちょっとゴマスリですが)

p317

大野は以前から、タミルの文学作品としても最古の歌集
「サンガム」と「万葉集」の関係に注目
し、日本最古の
歌集がタミル最古の歌集にならって編まれたのではないか、
と見ていた。

p318

大野の説をきちんと批判するためには、上代古語と
古典タミル語に通じていなければならない。
日本には大野以上に上代古語のわかる学者はいそうにない
そのうえ古典タミル語の知識ともなると、これはもう
ドリーム・チームをつくるようなものである・・・

p319
マレーシア・クアラルンプールで開かれた「世界タミル学会」
で、古典日本語と古典タミル語は、助詞と助動詞の間にも
対応のあることを発表
した。

=== まあ、これで 勝負あったということなの
    でしょうね。
    最後に残っていたパーツを解決したわけだし。

p321

祝賀の宴で(小説家)丸谷(才一)はグラスを手に、
・・祝辞を読み上げた。 大野の数々の業績を讃えてから、
「大野さんの玉にキズは、ケンカっ早いことです」
といって会場を沸かせた。

p323

大野の頭の中にある学者は、学問研究に誠実で、
事実に対して謙虚で、メンツなどにはこだわらない、
そういうものだったのだろう。

しかし大野は委細かまわず、「日本語の起源(新版)」などで、
日本語はどこからきたのかといった、学会を刺激するような
著書を次々に発表した。

その時、学会は無視するのが精一杯だったようである。
これは、という反論や批判はなかった。
大野が古典タミル語の生き字引と組んでいることを知り、
攻撃を諦めたのかもしれない。

=== その当時はそういうことになったのでしょうが、
    今現在はどうなのでしょうね。
    大野氏以上のタミル語の学者はいるのでしょうか。
    もしいないのであれば、このタミル語起源説は
    一定の定説として語り継がれるのでしょうか。
    学問には学問で対抗するという姿勢が
    なければ、これを乗り越えることはできない
    でしょう。

大野は、縄文時代の日本では母音が四つで母音終わりの、
オーストロネシア語族の一つと思われる言語が話されて
いたと推定する。
そこに南インドから、稲作や機織りという最先端の
文明を持つ人たちがきた。

彼らは文明と一緒に言語を持ち込み、その言語の基礎語や
文法や五七五七七の歌の形式
を受け入れてできたのが、
ヤマトコトバの体系である。

==== 分かりました。
     様々に事実を検証した結果がそういうもので
     あるのなら、そして、他の学者がこれを
     ひっくり返せないのなら、タミル語起源説
     を支持します。
     もっとも、こういう研究論文を読んでも
     理解できる能力は 私にはないのが
     残念ですけどね。 あははは

=== ちなみに、最新のDNA研究ではこんなことになっているそうです。

「2016年4月3日(日曜日)午後11時30分から放送の「サイエンスZERO」は、日本人のルーツについて。」

https://www.youtube.com/watch?v=oKGmG5hfANQ&feature=youtu.be

http://yonta64.hatenablog.com/entry/zero/2016-0403-%E7%B8%84%E6%96%87%E4%BA%BA%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%84

「今回判明したのは、「縄文人」は「東アジア」「東南アジア」の分岐よりも前にすでに分岐が始まっていたということ。

”オリジナル縄文人”は、中国人の先祖やベトナム人の先祖よりさらに古い時代に日本にやってきて独自の文化を作った可能性があるという。

オリジナル縄文人のDNAはアジアのどこにも見つからないもので全く新しい場所から発生している可能性があり、ユーラシア大陸のどこからやってきたのかもわからず、調査も振り出しに戻ってしまったという。」

p328

古代は女の方が男より地位が高かったんです。
ですから平安時代は女の方が立派な作品を多く残したし、
鎌倉時代もはじめは、優れた女流歌人が出ています・・・
・・大昔の日本は女性上位だったんですよ。

=== 立派な女性は 今も私の周りだけでも大勢いますしねえ。
    なぜ、今の日本は男社会になってしまったんでしょう。
    世界でも女性の社会進出が最低レベルですもんね。
    鎌倉時代からの武家社会がそのルーツなんで
    しょうか。士農工商ですか。

p331

教則本のようなもの・・・・「日本語練習帳」だった。
根底にあったのは、「日本語は曖昧な言語だ」という
誤った考え方を正したいという気持ちである。
どんな言語も、使い方を誤らなければ、曖昧になるような
ことはない
、ということである。

もし日本語が曖昧だとするなら、それは日本語のせいでは
ない。 使う人間の頭の中が曖昧なせいだ
これは大野が折あるごとに言い続けてきたことだった。

=== う~~~ん。
    これは非常に厳しいお言葉ですね。
    日本語教師としても考えを改めないといけません。

    ここにも、「空気による支配」があるのかも
    しれないですね。
    日本語は曖昧だ・・・ってのを厳密に事実として
    立証したものがあるのか、って話。
    私自身も、文脈によって、意味が変化する日本語は
    実に曖昧な言語だって思ってきましたからね。

    「日本語練習帳」を読み直さないといけません。

p333

大野から「日本語の形成」の「序文」が届いた。

「私はこの本の序文を書く時まで生きていることが出来て
仕合せである。私の一生はこの一冊の本を書くためにあった
と思う」

・・・鈴木は文字がにじんで、その先を読むことが
できなかった。

====  この本を読まなくちゃいけないな。
      おそらくこんなに仕合せな学者はいないので
      しょう。
      「空気に支配」され、事実の声も耳に入らず、
      他者の何かを絶対化して、情況に流される
      学者が多い中で、もしかしたらこの人は
      汎神論的な日本の風土の中で、
      自分を臨在的把握で絶対化できた、
      あるいは、学問自体を臨在的把握で絶対化
      することが出来た人なのかもしれないですね。

      さて、私は何を神がかりの絶対化の対象と
      しましょうかねえ。
      老い先短いし・・・・・

・・・・・・・・・・・・

一応ここで本編は終わりなんですが、

その6 では、エピローグの言葉を拾いたいとおもいます。

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