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2016年11月15日 (火)

「空気の研究」と「国語学者・大野晋の生涯ー孤高」川村二郎著 を読む - その3

「空気の研究」と「国語学者・大野晋の生涯ー孤高」川村二郎著 を読む - その3

ふたつの書籍を読み比べながら、日本語と「空気」の
関係のヒントを得たいと思っています。

今日は第六章 「タミル語」からです。

Img_3361

「空気」と関係づけるのは、ちょっと無理やり感があるん
ですが、その無理やりをやっちゃいましょう。

とりあえず、「日本語のタミル語起源説」のいきさつから・・・・

p263

日本語はどこからきたのか
国語学界では長い間、日本語の源流を北方に求める
研究者が多かった
。 日本語の文法的な構造が、
トルコ語やモンゴル語やツングース語といった「アルタイ語
群」と共通しているところから・・・・しかし文法的な
構造は似ていても、単語の対応は、はっきりしなかった。

朝鮮語と同系ではないかと・・・しかし百五十の中には
文化に関係した単語が多かった。文化に関係する単語は
言語の系統とは関係なく入ってくることが多い。
基本動詞については立証できない・・・・

p264

アイヌ語については、専門家の金田一京助が、「日本語と
アイヌ語は、文法的にもつながらない」と断定していた。

大野は・・・「日本語と関係の深い言語は、南方にある
のではないか
」と書いた。・・・それきりになっていた。

=== ここまでは、いわゆる良く知られている説ですね。
    でも、どうも、いま一つ決め手にかけるということ
    みたいです。

学習院に日本語の系統について講義にきていた江実が、
「大野君、南インドのドラヴィダ語族は、日本語と文法の
構造がよく似ているんだ。これは要注意だよ」といった・・
・・・京大出身の言語学者で、・・・内モンゴルで
モンゴル語の研究をした。

日本の言語学界はどういう理由からか戦後、戦争の前から
外地にいた言語学者を軽視し、ときには無視する傾向が
あった。

p265

江は・・・日本の南・・・ニューギニアに日本語の先祖
いるかもしれないという説を発表し・・・
パプア湾沿岸の言語に日本の上代語とよく似ているものが
あることを発表・・・
語順が似ていることや単語が日本語と同じように母音
終わっていることをあげていた。

=== ことほど左様に、日本語の起源については
    様々な説があるようです。
    私が今までに読んだ本の中にも、日本人の右脳や
    左脳と言語処理の関係が、欧米人のそれとは
    異なっているという説の中で、このポリネシアの
    周辺の言語が 日本語と同じ母音で終わる言語であって
    自然の音、虫の声などを楽しめる民族だとの
    説を読んだんです。
    もしかしたら、大昔のその昔に太平洋に沈んだと
    されるムー大陸の子孫が日本人なんじゃないか、ってね。
    誰か日本人ムー大陸起源説をやってくんないかなあ~~。

その時のメモはこちらでご覧ください:
右脳と左脳 音楽vs虫の「「声」・日本語を母語とすると・
http://baguio.cocolog-nifty.com/nihongo/2013/12/post-aba3.html

謎の伝説の大陸ムー大陸:
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A0%E3%83%BC%E5%A4%A7%E9%99%B8

p265

ドラヴィタ語については若い言語学者の芝丞や・・・
芝は興奮した様子で「大野さん、タミル語はアイウエオ順
並んでいます」と電話をしてきたこともある。

p267

辞書を開いた・・・「アンガライ」を見つけた・・・
日本の古語に「アカラシ」という語がある。
・・意味が共通しているだけでなく、音素が五つ対応している。
これまで数々の言語と日本語の比較をしてきたが、一語とは
いえこんなに重なることが多い単語を見るのははじめてだった。

p268

ドラヴィダ語は二十を超える言語から成り立っているが、
語形も意味も日本語とよく似ているのは、タミル語だった。

p269

経済学者のタワラジという人が古典の教養もあることが・・・
かれは大野の関心が古代のタミル語にあることがわかると、
タミルに伝わる「ボンガル」という祭の話をした。

大野の家も子供のころは毎年一月十五日には小豆粥を炊き
それに白砂糖をかけて・・・正月の慣例になっていて・・・

思わず、「お粥にお砂糖はかけませんか?」と聞いた。
すると「イエース。 砂糖や砂糖キビで甘くして食べます」
と言ってから、「どうしてあなたはそんなことまで知っている
んだ」という顔をした。

p270

一月十五日に赤い粥を炊き、甘くして食べて祭をすることは、
平安時代に紀貫之が書いた「土佐日記」にも出てくる・・・

かなりの単語の音と意味が、良く似ているだけではない。
古い慣習も似ている。単なる偶然とは考えにくい

・・・稲作関係の言葉に対応しそうなものが多いことも
わかった。

p272

朝日新聞に載った大野の寄稿も「週刊朝日」の対談も、
学界からはほとんど無視されたが、一般にはよく読まれた
ようだった。

p273

NHKから電話があったのは・・・
「先生の朝日新聞の御文章、興味深く拝読しました。
それで実は、先生に南インドにいって仮説について調べて
いただいて、その様子をテレビ番組にできないか、と
考えておりまして」

大野はわずかな会話から、その人間の人となりを当てる
ことができた。 それは天才的といってもよいものだった。

「僕は「上代仮名遣の研究」に始まって「岩波古語辞典」
まで、約二万語の単語とつき合ったんだよ。人間でいうと、
二万人の人とつき合ったことになるんだな」

p277

インド大使館員に・・・マドラス大学の教授・・・を教えて
もらって・・・教授は古典タミル語の権威だった。

p278

教授の顔とノートを交互に見ていた。
我々はこの研究を進めなければなりませんね」と英語でいった。

p279

取材を通して知り合った東大の言語学、考古学、文化人類学
の教授たちに意見を聴いて回った。
しかし「面白そうだ」という学者はいなかった
ほとんどの学者が大野の仮説を「考えてごらんなさい。日本と
南インドは、七千キロも離れているんですよ。ありえない話
でしょう」といって、一笑に付した。

=== 私は学者とか研究者とかいう人たちは
    既成のことに囚われることなく自由な発想で
    面白そうなことに取り組む人たちだと思って
    いたんですが、頭が固いみたいですね。
    事実を見ずに、権威に寄り掛かるのが日本の学界
    ってことなんでしょうか。
    異端児じゃないとノーベル賞は無理みたいですね。

p280

「北方騎馬民族日本征服説」で有名な考古学者は、・・・
「七千キロなんて、大した問題じゃないよ。 海は大昔
ハイウェーだったんだから
。 大体日本の学界は、新しい
説が出てくると、まず叩く。悪いクセだ。
どんでもない話から仮説ができて定説になることは、そんなに
珍しいことじゃないんだ。」

橋爪は「新説はまず叩く」に、ヒザを打った。学界の中の
足の引っ張り合いや嫉妬のすさまじさは、教育番組を
つくるときにさんざん見てきた。

足を引っ張られまいとして井の中の蛙になって大海に
出ようとしない学者・・・波風を立てないように・・・

仲良しクラブ」の風潮は、何も学界に限ったことでは
なかった。 残念ながらNHKも例外ではなかった。
しかし大野は、そういう学者ではなかった。

=== この辺りが、例の「空気」に通じるところでしょうか。
    足の引っ張り合いや嫉妬のすさまじさが
    表面に出たのが あの「STAP細胞・小保方事件」
    なんでしょうか。
    自殺者まで出すすさまじさでしたが・・・
    私は密かに 小保方節が将来の定説になることを
    願っている一人なんですけどね。

    「それでも地球は廻っている・・・」
    「STAP細胞はあります!」

    卑近な例で申し訳ないんですけどね。
    私がフィリピンの大学で使われている歴史教科書を
    読んだ時に感じたことなんですけど。
    日本の教科書では感じなかった、東南アジアの
    古代からの海を通じての世界的交流の広さです。
    インドあたりからフィリピンあたりまでは
    当然のことのように交易が盛んだったんですね。
    それよりも後に、倭寇なんかがちょこちょこと
    フィリピン沿岸に姿を現わしている。
    植民地化をされる前の昔から交流が盛んだった。
    もちろん、仏教がはるばる北インドから
    ガンダーラや中国を経て、日本へ伝来したこと
    なんかを考えれば、まったく不思議じゃないです
    もんねえ。 海どころか歩きですよ。

・・・・・

それでは、 その4 でどう決着するんでしょうか。

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